最高裁判所第一小法廷 昭和25年(あ)206号 決定 1950年7月13日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人島野武、同鈴樹忠信上告趣意第一点について。
所論は明らかに刑訴第四〇五条に定める上告理由に該当しない。そして記録によれば被告人の第一審弁護人青木定行は昭和二四年七月一日単独で被告人のため適法な控訴の申立を為し同年七月六日その控訴の申立取下書を提出したがその取下は刑訴第三五九条、第三六〇条に照しその効力を認めることはできない。しかのみならず被告人は自ら控訴申立の取下をしないで却って同年八月二七日附を以て控訴審における弁護人を選任し同年一一月二日同弁護人と共に原審公判廷にも出廷しているから、原審が前記弁護人の控訴申立を適法有効としたのは正当であって、同第四一一条を適用すべき余地も存しない。
同第二点、第三点について。
所論はいずれも明らかに刑訴四〇五条に定める上告理由に当らないし、また、同四一一条を適用すべきものとも思われない。
よって同第四一四条、第三八六条第一項第三号に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅)